『Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか』の感想
タグ:
Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか
どんな本?
Googleのエンジニアがソフトウェア開発における「人」の重要性を語る本です。チーム、リーダー、有害な人、ユーザーなど、ソフトウェア開発を取り巻く人との関わり方を例とジョークを交えつつ解説しています。
ソフトウェア開発はチームスポーツ
まず興味深いのは「ソフトウェア開発はチームスポーツである」という指摘です。「技術的要因と同じだけ人的要因が影響する」「チームは個人の生産性や幸福に直接影響する」とソフトウェア開発における「人」の重要性を指摘しています。
以前読んだ新卒エンジニアの採用に関する本で紹介されていた、「技術力全振りの採用をした結果カルチャーの形成がうまくいかなくなり、離職率が上がってしまった」という話を思い出しました。私個人の経験から言っても仕事に対する人の影響というのは小さくない、と思えます。世界屈指の技術力を持つGoogleのエンジニアたちも「人が重要である」と指摘しているのはなかなか興味深いですね。
HRT
本書ではソーシャルスキル三本柱・HRTを重視しなさい、と説いています。HRTはHumanity(謙虚)、Respect(尊敬)、Trust(信頼) の頭文字です。社会的問題のほとんどすべてはHRTのどれかが欠けるために起こるのであり、他者とのコミュニケーションでHRTを意識することで、人間的問題に煩わされることなくソフトウェア開発できる、と述べています。
HRTを実践してみた
刺さったのは「間違いや能力不足を認めることにはHRTのすべてが含まれる」という指摘。これを読んで、これまで無意識のうちに「自分の間違いや能力不足を人に知られるのを恐れていた」ことに気づきました。人に知られて馬鹿にされたり、失望されたりしたらどうしよう、と思ってしまっていたんですよね。しかし、「間違いや能力不足を認めることにはHRTのすべてが含まれる」なら「間違いや能力不足を認められないことはHRTを毀損している」のでは?
このままではよくない!と思ったので、あるとき仕事でわからないことに対して思い切って「わからない」と言ってみました。あっさり教えてもらってその場は終了。意外となんともなかったです。よく考えてみたらわからないという発言に対して普通はとやかく言いませんよね。というわけで、それ以来わからないことははっきりとわからないと言えるようになりました。もちろん、自分で調べられることは調べた上で聞くようにしています。
HRTを知ったこと、それを意識・実践したことがこの本を読んで得た一番の収穫でした。やってみて思ったんですけど、HRTを実践すると自分に優しくなれる気がします。
ソフトウェア開発のすべてはHRTに通ず
本書ではチームやマネジメント、有害な人への対処、組織の扱い方やユーザーとのコミュニケーションについて語られていますが、すべてHRTに通じています。HRTがあればいずれもうまくいくし、HRTのどれかが欠けるからこそ問題が発生するというわけです。
ひとつ面白いと思ったのが、HRTの影響範囲は拡張可能である、という話。自分自身やチームだけでなく、ユーザーに対してもHRTを拡張できます。まず自分から始めないと始まらないと思うんですよね。個人的に重要だと思っている考え方に、「自分自身もその環境を構成している因子のひとつ」というものがあります。自分の周囲にHRTを広めるには、まず自分がHRTを実践しなければいけない、と思いました。
まとめ
実はこの本は職場のチームの必読書だったので手に取ったのですが、非常に示唆に富む一冊で読んでよかったです。エンジニア職業人生の早い時期にこの本と出会えたのは幸運だったと思います。メンバー、チームリーダー、管理職など、各フェーズでそれぞれ学びを得られる良書だと思います。これからも折りに触れた繰り返し読んでいきたい本です。