2026年のWeb制作でWordPressを選ぶとき・選ばないとき
公開タグ:3年前、「Web制作でWordPressをやめてAstro + microCMSを使うようにしたら幸せになれた」という記事を書きました。
当時はWordPressの保守コストや開発者体験の悪さに辟易していて、とにかくWordPressから離れたいという気持ちで書いた記事でした。今読み返すとやや極端だったなとも思います。
あれから3年が経ち、WordPressはブロックテーマへと舵を切りつつあります。私自身の考えも「WordPressをやめる」から「案件に応じて選ぶ」へと変わりました。
この記事では、2026年現在の私がWeb制作でWordPressを選ぶとき・選ばないときの基準を書いていきます。
まず結論から
- WordPressはブロックテーマに舵を切りつつある。オリジナルのクラシックテーマ制作は新規では選びづらい
- エディターで表現できないデザインを作り込むならAstro。規模の大きいバックエンドがあるならNext.js
- 既成テーマで足りるなら今もWordPressが有力。予算が少なくデザインの要求も高くないサイトに有効
- オリジナルのブロックテーマは、相当の予算・期間・保守体制とWordPressでなければならない事情が揃うときだけ
- WordPressがオワコンなのではなく、これまで必要以上にカバーしていた部分を他の技術に適切に委譲しただけ
WordPressはブロックテーマに舵を切りつつある
公式のデフォルトテーマは、Twenty Twenty-Two以降すべてブロックテーマです。
また、公式のテーマハンドブックにはブロックテーマについて以下のように書かれています。
ブロックテーマは、WordPressのテーマを構築する現代的な方法です。一般に標準的な規約に従い、すべてがブロックで構築されます。これがWordPressプロジェクトの未来であるため、本ハンドブックは主にこの方法でのテーマ制作に焦点を当てます。
サイトエディター(新しいタブで開く)のように、クラシックテーマでは使えない新機能も登場しています。今後も新機能はブロックテーマにのみ追加されていくかもしれません。
クラシックテーマは当面の間サポートされるでしょうが、将来的にWordPressの中心ではなくなっていくと思われます。そのため、オリジナルのクラシックテーマ制作は、新規案件の手段としては選びづらいと考えています。
オリジナルのクラシックテーマを作るくらいならAstro・Next.js
オリジナルのクラシックテーマを作らない理由は、WordPress公式の方向性以外にもあります。それは、その代替となるより優れた技術の登場です。
オリジナルのクラシックテーマでサイトを構築する場合、ブロックエディターで表現できないデザインを実現するには、テンプレートファイルに直接マークアップするか、編集画面にHTMLとして埋め込むことになります。いずれにせよ、非エンジニアが編集できる状態ではありません。
非エンジニアが編集できない領域が生じることを許容するなら、現在ではAstroやNext.jsといったフレームワークのほうが多くの面で優れています。開発者体験は圧倒的に良好ですし、microCMSのようなヘッドレスCMSを使えば非エンジニアが自由に編集できる領域も確保できます。
どちらが絶対的に優れているとは言えませんが、オリジナルのクラシックテーマを作るくらいならAstro・Next.jsを選択する方がよいと思います。
技術選択のフローチャート
ここまでオリジナルのクラシックテーマを作らない理由を書いてきましたが、WordPressそのものが不要になったわけではありません。案件の性質によっては、今もWordPressが有力な選択肢です。
ここからは、WordPressも含めて何をどう選ぶかを書いていきます。私の選び方をフローチャートにするとこんな感じです。
既成テーマで足りるデザインか
├ 足りる → WordPress + 既成テーマ
└ 足りない
└ WordPressでなければならない事情があるか
├ ない
│ └ 規模の大きいバックエンドが必要か
│ ├ 不要 → Astro
│ └ 必要 → Next.js
└ ある
└ 相当の予算・期間と保守の目処があるか
├ ある → WordPress + オリジナルのブロックテーマ
└ ない → 要件かデザインを見直す
上から順に見ていきます。
ケース別の選び方
予算が少なくデザインの要求も高くないとき: WordPress + 既成テーマ
WordPressでは、オリジナルのテーマを制作するだけでなく、有料・無料で配布されているテーマを利用することもできます。
中でもSnow Monkey(新しいタブで開く)やSWELL(新しいタブで開く)は質が高く、カスタマイズ手段も豊富です。こうした既成テーマをそのまま使う、あるいはカスタマイズすることで、見栄えの整ったサイトを素早く立ち上げられます。
この方法が特に有効なのは、予算が限られている場合です。「名刺代わりにサイトがほしい」といったケースが典型でしょう。
デザインを作り込むとき: Astro
デザインを作り込む必要があれば、Astroを採用します。HTMLとCSSを直接書けるので、デザインの表現に制約がありません。
Astroではモダンフロントエンドのツールを使えるので、開発者体験にも優れています。また、静的サイトとして出力すればHTMLを配信するだけになるので、WordPressと比べてセキュリティリスクは低くなります。
CMSが必要であれば、microCMSのようなヘッドレスCMSを使用します。
相応の規模のバックエンドがあるとき: Next.js
お問い合わせフォームやSNSの投稿の表示といった簡単なバックエンドであれば、AstroとCloudflare Workersで実装します。
一方、もっと複雑で規模の大きいバックエンドが必要であれば、Next.jsを採用します。基準としては何かしらのデータベースが必要なときでしょうか。
WordPressでなければならない事情があるとき: WordPress + オリジナルのブロックテーマ
条件によっては、オリジナルのブロックテーマを制作することも選択肢になります。
ただし、ブロックテーマの制作はコストが大きくなりがちです。デザインによってはオリジナルのブロックを大量に実装する必要がありますし、ブロックテーマは発展途上のため公式の仕様変更も多く、その追従にも手間がかかります。
これは制作段階に限った話ではありません。運用段階でも、一般的な保守管理に加えてオリジナルのブロックの追加や保守、仕様変更への対応が必要になります。
よって、オリジナルのブロックテーマを選べるケースは限られます。可能なのは以下がすべて揃うときだけだと思います。
- 相当の制作予算と期間を用意できる
- 継続的な保守管理の目処が立つ
- WordPressでなければならない事情がある(以下のいずれか)
- 既存資産を継承する必要がある
- クライアント側が既にWordPressの運用に習熟している
- サイトのコンテンツすべてをクライアント側が編集できるようにしたい
ヘッドレスWordPressは選ばない
WordPressをヘッドレスCMSとして使っているケースを見かけますが、個人的には否定的です。WordPressにはビューも備わっているのだから、CMSとして使うならそのビューも使ったほうが理にかなっていると考えているからです。
例外は、WordPressから最終的にAstroやNext.jsへ移行する際にその途中段階としてヘッドレス化する場合です。
WordPressはオワコンではない
かつてはコーポレートサイトもキャンペーンサイトもメディアも、なんでもかんでもWordPressで作っていました。CMSが必要かどうかにかかわらず、とりあえずWordPress、という時代です。
その時代は、AstroやNext.jsといったフレームワーク、STUDIOのようなノーコードツールの登場によって終わりつつあります。とはいえ、それはWordPressが衰退したということではありません。WordPressがこれまで必要以上にカバーしていた領域を、他の技術に適切に委譲しただけです。
既成テーマを活かして素早くサイトを立ち上げる。クライアント側でサイト全体を編集できるようにする。こうした要求に対しては、今もWordPressが有力な選択肢です。オワコンどころか、選ぶ理由がはっきりしたぶん、以前より付き合いやすくなったとすら思います。
まとめ
この記事では、2026年現在の私がWeb制作でWordPressを選ぶとき・選ばないときの基準を書きました。
- WordPressはブロックテーマに舵を切りつつある。オリジナルのクラシックテーマ制作は新規では選びづらい
- オリジナルのクラシックテーマを作るくらいなら、AstroやNext.jsのほうが多くの面で優れている
- 既成テーマで足りるなら、今もWordPressが有力な選択肢
- オリジナルのブロックテーマは、相当の予算・期間・保守体制とWordPressでなければならない事情が揃うときだけ
- WordPressはオワコンではなく、必要以上にカバーしていた部分を他の技術に委譲しただけ
冒頭で3年前の記事を「やや極端だった」と書きましたが、当時否定したかったのはWordPressそのものではなく、なんでもかんでもWordPressで作ることのほうだったのだと思います。
WordPressが数ある選択肢のひとつになったという意味で、以前より健全な時代になったと感じます。触る機会は減りましたが、まだまだお世話になっていきそうです。